ガザル(2) 愛の水脈


2010/12/03に続いて「ハーフィズ詩集」から。その243:


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 神よ、心が見たこと聞いたことを
 しばしでも述べられる親しき友はいずこ。
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 ハーフィズよ、
 そなたの務めは、祈りを捧げるだけ
 恋人が聞こうが聞くまいが、こだわるな。

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ハーフィズが語りかけるのは、自分?酒姫?恋人?詩人?天上?


この独白のような語り口、そのトーン、もしかして時を超えて、
ゲーテをも抜いて、ブラウニングに引き継がれてはいないか。
あのブラウニング独特の、劇的独白(dramaric monologue)に。


試しに「最後の遠乗り(The Last Ride Together)」を見てみよう。

(訳は福原麟太郎先生と富士川義之岩波文庫版を参考に)


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 僕は思った
 人は苦闘の末、失敗するだろう。それでも
 なお、怯(ひる)むものではない、と。

 仕事の結果の先を見よ;

 成し遂げられた事のわずかさと、
 達成できなかった事の山のおおきさの
 その先を。

 溢れるばかりの「過去の希望」こそが、
    「現在への贈り物」となるのだ。
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present(現在)という言葉の真の意味を語っている気がする。
(これは故・福原先生の卓見の賜物)


ブラウニングの無尽の活力と明るさは、ハーフィズを圧倒している。

それでも二人には共通して持っているものがあるように思える。


ほとばしる、あるいは、切々たる、愛の地下水脈!


少なくとも、ブラウニングの場合は歴然としている。

年上の、最愛の伴侶:エリザベスとともに、生きること。



[see・2010/12/03・ガザル(ペルシャの抒情詩)]